彼女の子守唄を聞きながら、目を瞑る。
その彼女の詩は慈しみに満ち満ちていた。
その彼女の声は低く、鼓膜を震わすように僕の耳に残った。
それは、この青い大地をすっぽり包み込むかのような愛の歌だった。
そっと目を開けると、彼女が窓辺に佇んで、
やはり静かに歌っている。
その唄には力があった。
願いが込められていた。
静かで、穏やかで、願って止まぬ安息の日々を、と。
そんなにも歌う彼女の背筋は、悲しいほどに何処か懐かしくもある。
僕は再び目を瞑った。
(………。)
眦から涙が滲んだ。
僕は確かにこの子守唄を耳にするのは初めてなのに。
何故、むしょうに懐かしいのだろう。
何ゆえ、こんなにも胸が詰まるのだろう。
(…っぁ。)
息が零れる。
眦から涙が滲む。
彼女は美しい。ほんとうにうつくしい。
神様、もう少しだけ長く。
刹那でも長く。
この優しい唄が続きますようにと、僕は祈った。
僕は祈った。
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